友の会の活動

=2019年度活動実績=

 ハイチにおける活動

*保健医療支援事業

①無料結核検診

 2013年からのべ8回目となる無料結核検診を、特定非営利活動法人Future Codeの大類隼人代表と協力し、2019年4月29、30日にレオガン近郊にある国立シグノ結核療養所(シグノ・サナトリウム)で実施しました。レントゲン検査は高額なため日常的に行われていませんが、現地の医師が結核が疑われる患者を、我々が診療にあたり、レントゲン検査が無料で実施できるこの2日間に集中して再受診させています。例年3日間のところ2日間となったのは、5月1日がハイチの国民の祝日であるため、2019年度は連続して3日間の平日が確保できなかったためです。2日で62名が受診し、問診と胸部レントゲン写真で結核が強く疑われる3名に喀痰検査を指示し、1名が結核と診断されました。喀痰培養と併用し、核酸増幅法(Lamp法)を用いての迅速診断も実施しました。また、ポータブルエコーを持参し、結核に限らず受診者の症状にあわせて適宜検査できたのは大変有意義でした。​

 

②サナトリウムへの給食費支援
 結核患者が栄養をつけ、安心して療養できるように、今年度もシグノ・サナトリウムの入院患者のための給食費として約91万円の支援を実施しました。サナトリウムは2016年11月から新病棟が全稼働し、平均して常時50人が入院しています。2013年からの継続的な一連の支援に対して、病院責任者のシスター、Bernadette Nicolas(ベルナデット・ニコラ)さんから、ハイチ友の会とその支援者に対して、心からの感謝の言葉をいただきました。​

*教育環境整備事業

①クラックプラン
 2001年度からはじまった奨学金制度クラックプランで、経済的に恵まれない45名の児童・生徒らへの就学支援を継続しています。2019年度はベネの聖ジェラルド学校を訪問し、校長から児童・生徒たちの就学状況について報告を受けました。昨年度、ハイチの大手通信会社の支援で、中等部の校舎が新たに建設され、その校舎での授業風景を視察することができ、学ぶ喜びにあふれた生徒さんたちも出会うことができました。​

*農村開発事業

マイクロクレジット(少額融資)を通したモリンガ栽培・加工促進事業

 ハイチ西県ロッシュ地区においては、マイクロクレジットを利用して植林されたモリンガをモニタリングしました。これは、JICA基金と国際緑化推進センターの緑の募金の支援を受けて2018年に実施した事業の後継に当たり、ゆうちょ財団の支援により行われました。なお、2019年4~5月には土壌保全工法を取り入れ16500本のモリンガが植林されたほか、自身の畑や土地における植林希望者のうち選定された10名の農民に対して、一人当たり約2万円の融資を行い、植林を促しました。マイクロクレジットの返済とモリンガの生育について話し合う会議は、毎月定期的に行われ、最終返済月である2019年12月には、利子を含めた全額が返済されたことを確認しました。​

 当初の計画ではモリンガの加工作業も8月から実施する予定でしたが、加工施設の整備が遅延した上に、9月中旬から始まった長期的なデモによる政情不安で、道路封鎖や商業施設・銀行の閉鎖により、流通をはじめ、経済活動が停滞し、加工に関する計画は中断を余儀なくされました。​

 その代替として加工作業のための簡易マニュアルを作成し、今後事業が進展した際に作業が円滑に進むように準備しました。​

 また、8月末から9月上旬にかけて2回に分けてそれぞれ2日間、合計93名の地域住民を対象に、環境・衛生・栄養をテーマとした研修会を実施しました。研修では、基本的な知識の共有や参加者によるグループワークを通し、地域の課題を皆で認識することができました。農民たちの主体性を尊重しながら進めている本事業に対する現地での評価は高く、事業を継続させ、成功させたいという強い意欲が感じられました。​

 しかしながら政情不安に伴う経済の低迷により、事業期間中におけるモリンガの市場拡大が困難となり、さらに収穫後の加工品の販路が不透明となったことで、農民らのモリンガ栽培の管理が疎かになったことは否めません。​

 この事業の途中経過について、「Try & Error!? マイクロクレジットを通したモリンガ栽培・加工促進事業」と題して10月はゆうちょ財団主催で行われた国際協力報告会(秋葉原)で発表する機会をいただきました。​

 

 日本国内における活動

朝日新聞社「論座」に2度にわたり寄稿する機会に恵まれました
 

 2019年5月29日に「大坂なおみ?父の祖国ハイチで聞いた意外な反応」、7月2日には「大坂なおみの父の故郷ハイチで25年見てきたこと」と題して寄稿させていただきました。​

これまでの当会の取り組みやハイチの抱える問題を俯瞰し、ハイチにあまり親しみのない方たちにもハイチの現状を知っていただける貴重な機会となりました。​